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2026.08.02
コラム, 遮熱塗料

遮熱塗料が届く熱、届かない熱|近赤外線と遠赤外線で分かれる屋根の役割分

金属屋根の断面図。屋根の外側で日射(近赤外線)を反射する遮熱塗料と、屋根裏側で遠赤外線を反射する遮熱材の持ち場の違いを示した二段構えの図

 

10秒でわかる結論

  • 屋根を熱くしているのは、太陽光の可視光(約45%)と近赤外線(約50%)です(目安値)。太陽光にも遠赤外線はわずかに含まれますが、屋根を温める要因としてはごく小さな量です。
  • 可視光・近赤外線を吸収して温まった屋根は、今度は自分で遠赤外線を放ち始めます。屋根が冷めるまで、日没後も続きます。
  • 遮熱塗料が反射しているのは、屋根を温める前の日射です。リフレクティックスが反射しているのは、温まった屋根が放つ遠赤外線です。
  • 分かれ目は放射率です。塗膜は0.85〜0.95程度(目安値)で、遠赤外線をよく吸収し、よく放出します。アルミ層は0.03(カタログ値)です。
  • 2つは対立する技術ではありません。屋根の外側で減らす役と、屋根の内側で止める役という関係です。
  • 表面温度を下げること自体が目的なら遮熱塗料(舗装・デッキ・プールサイド)。反射しきれなかった熱の行き先が室内なら遮熱材(工場・倉庫の屋根)。
  • 比較検討で見るべきは、日射反射率と放射率、表面温度ではなく室内側の実測データ、初期費用ではなく再塗装周期を含めた期間総額の3点です。

日なたのじりっとした熱さと、日没後のアスファルトの熱さは、別物です

夏、建物の日陰から一歩出た瞬間に、肌がじりっとする。あの感覚は、雲が太陽を隠すとすっと消えます。

もうひとつ。日が沈んで気温が下がったあと、アスファルトの上に立つと、足元がまだ熱い。太陽はもうありません。それでも熱い。

この2つの熱さは、正体が違います。前者は太陽から直接届く可視光と近赤外線、後者は温まったアスファルト自身が放つ遠赤外線です。

屋根の遮熱を検討するとき、遮熱塗料とリフレクティックスのどちらを選ぶかで悩む場面があります。金額だけを並べると塗料のほうが安く見えますし、どちらも「熱を反射する」と説明されます。同じことをする安い版と高い版のように見えてしまいます。

けれども、この2つが相手にしている熱は、上の2つの熱さと同じくらい違います。比べる前に、そこを揃えておく必要があります。

屋根を熱くしているのは、太陽光の可視光と近赤外線

太陽から地上に届く光は、波長でおおまかに次のように分かれます(数値は目安値です)。

波長の目安 エネルギーの割合 主な特徴
紫外線 0.38µmより短い 約5% 日焼け・材料の劣化
可視光 0.38〜0.78µm 約45% 目に見える光。「色」そのもの
近赤外線 0.78〜2.5µm 約50% 目に見えない。屋根を温める主役のひとつ
中・遠赤外線 2.5µmより長い ごくわずか 大部分が大気中の水蒸気・CO₂に吸収され、地表にはほとんど届かない

太陽光にも遠赤外線は含まれています。ただし太陽は約6,000℃と非常に高温なので、放つエネルギーの大半は波長の短い可視光と近赤外線に集中しています。遠赤外線の割合はわずかで、しかも地表に届くまでに大気にほとんど吸収されてしまいます。

光が屋根を温める仕組み

光は波長に関係なく、屋根に吸収されれば熱に変わります。可視光や近赤外線は、まず屋根材の電子に受け取られ、そのエネルギーがすぐに周囲の原子へ渡って、原子・分子の振動、つまり熱になります。

どれだけ温まるかを決めるのは、届くエネルギーの量と、吸収される割合です。太陽光ではエネルギーの約95%が可視光と近赤外線なので、屋根を熱くしているのはこの2つです。濃い色の屋根ほど熱くなるのは、可視光をよく吸収するからです。

日陰から出た瞬間の「じりっ」も、可視光と近赤外線が肌に届いた結果です。だから雲が出ると消えます。太陽が出ている間だけの熱です。

遮熱塗料が主戦場としているのは、ここです。

遠赤外線とは何か:温まった屋根そのものが放つ、日没後も続く熱

屋根の下で問題になる遠赤外線は、出どころが違います。太陽ではなく、温まった屋根材自身が出しています。

温度を持つ物はすべて熱線を出しており、その波長は熱源の温度で決まります。温度が高いほど波長は短く、低いほど長くなります。

熱源 おおよその温度 主に出てくる熱線
太陽 約6,000℃ 可視光・近赤外線(短い)
夏の金属屋根 50〜70℃程度が目安 遠赤外線(長い)

同じ「熱線」でも、太陽が出すものと60℃の屋根が出すものでは、ピークの波長が10倍以上違います。太陽光のピークは約0.5µm、60℃の屋根が放つ熱線のピークは約9µmです。

そして、屋根が放つ遠赤外線には次のような性質があります。

  • 目に見えない。光っていなくても飛んでくる
  • 太陽が沈んでも続く。屋根が冷めるまで放たれ続ける
  • 日陰は関係ない。熱源が屋根そのものなので、屋根の下にいる限り浴び続ける

遠赤外線は分子の振動と波長が合うため、人の体や室内の物に当たると、その分子を直接揺らして温めます。日没後のアスファルトが熱いのも、夕方になっても工場の中が涼しくならないのも、同じ理屈です。

屋根の熱は3段階で室内に届く

  1. 太陽の可視光・近赤外線が屋根に当たる
  2. 吸収された分が熱になり、屋根が50〜70℃まで温まる
  3. 温まった屋根が遠赤外線を放ち、室内の人や物を温める

遠赤外線は、屋根を温める原因ではなく、温まった屋根から出てくる結果です。遮熱塗料は1〜2の段階で、リフレクティックスは3の段階で効きます。

近赤外線と遠赤外線の違いを一覧にすると

可視光・近赤外線 遠赤外線(屋根が放つ熱)
どこから来るか 太陽 主に温まった屋根材そのもの(太陽光にもごくわずか)
波長 短い(0.38〜2.5µm) 長い(4µm以上)
いつ来るか 日中、太陽が出ている間 屋根が温まってから。日没後も
日陰に入ると 消える 消えない
反射できる材料 白色系・特殊顔料(塗料) 低放射率の金属面(アルミ)

遮熱塗料のカタログにある「日射反射率」が意味していること

遮熱塗料の性能値として示されるのは、多くの場合「日射反射率」です。これは紫外線・可視光・近赤外線を合わせた太陽光を、どれだけ跳ね返すかという値です。屋根を温める前の日射の話であって、温まった屋根が放つ遠赤外線の話ではありません。

ここで、屋根の色が効いてきます。

可視光は「色そのもの」です。屋根が濃く見えるということは、可視光を吸収しているということです。これは塗料の出来ではなく物理的な制約です。一方、近赤外線は目に見えないので、色に縛られません。濃色でも近赤外線は反射できます。遮熱塗料が濃色でも一般塗料より優れているのは、この部分が効いているからです。

その合計として、遮熱塗料の日射反射率は白系で70〜80%程度、濃色では40%前後が上限とされます(いずれも業界一般の目安値)。

つまり、遮熱塗料は無意味ではないし、色によって性能が変わるのは事実だが、その理由は塗料の品質ではありません。カタログの数値を読むときは、白系の値と濃色の値のどちらが自社の屋根に当てはまるかを確認してください。

塗膜の放射率0.85〜0.95が意味していること

もうひとつ、カタログにあまり大きく載らない値があります。放射率です。熱を放出しやすいかどうかを示します。

塗膜の放射率はおよそ0.85〜0.95(目安値)です。放射率が高いということは、遠赤外線をよく吸収し、よく放出するということです。

つまり、反射しきれなかった日射で屋根が温まると、その屋根は今度は熱を出す側に回ります。塗料が第1段階で日射を減らしても、第3段階の遠赤外線に対しては、塗膜自身が放出する側になります。

ただし公平に言うと、塗料で屋根が焼けにくくなれば、屋根が放つ遠赤外線の量も減ります。放射される熱の量は屋根の温度で決まるからです。塗料は間接的に第3段階にも効いています。ただ、ゼロにはならないということです。

リフレクティックスが相手にしているのは、遠赤外線のほう

アルミ層の放射率は0.03前後(カタログ値)です。塗膜の0.85〜0.95に対して、桁が違います。

放射率が低いということは、熱を放出しにくいということであり、同時に長い波長の熱線に対して反射体として働くということでもあります。リフレクティックスが屋根裏で遠赤外線を止められるのは、この材料特性によります。

  • アルミ純度99.99%、輻射熱の反射率99%(カタログ値)、放射率0.03(カタログ値)
  • 厚さ約8mmの多層構造
  • 施工時に空気層ができるため、反射面が屋根材に接しない

最後の点も効いています。塗料は屋根材に密着しているため、反射し損ねた熱がそのまま屋根材へ伝わります。リフレクティックスは反射面が屋根材から離れているので、熱が伝わる経路そのものが切れています。

さらに、反射は方向を選びません。外から入ろうとする熱線を止めるだけでなく、室内で発生した熱線も室内側へ返します。冬は暖房の熱を室内へ反射するため、夏だけの対策にはなりません。

→ 遮熱材リフレクティックスの実験データを見る

遮熱塗料が力を発揮する場所:反射した時点で目的が達成される面

誤解のないよう申し添えます。遮熱塗料が正しい選択になる場所は、確かにあります。

舗装路面、プールサイド、屋上デッキ。その面の温度を下げること自体が目的の、屋外水平面です。表面で反射した時点で目的は達成されますし、吸収された熱は躯体や地盤へ逃げていくため、行き先が問題になりません。国や自治体がヒートアイランド対策として遮熱性舗装を採用しているのは、この用途です。

屋根についても、屋根材そのものの熱による劣化を抑えたい、表面温度を下げたいという目的であれば、塗料は素直に機能します。

リフレクティックスが力を発揮する場所:熱の行き先が室内である建物

違いが出るのは、反射しきれなかった熱の行き先が室内である場合です。工場と倉庫の屋根が、まさにこれに当たります。

ここでは、屋根の表面が何℃かではなく、屋根の裏側から室内へ何が放たれているかが結果を左右します。作業している人が浴びているのは、屋根表面ではなく屋根裏面から降ってくる熱線だからです。

持ち場を並べると、こうなります

遮熱塗料 リフレクティックス
施工する場所 屋根の外側 屋根の裏側
主に止める熱 可視光・近赤外線(日射) 遠赤外線(屋根が放つ熱)
働くタイミング 太陽が出ている間 屋根が温まっている間(日没後も)
効く方向 外から中への一方向 双方向(冬は暖房熱も反射)
経年変化 汚れの付着で反射性能が低下。再塗装が必要 アルミ層は劣化しにくい
目的が合う場面 その面の温度を下げたい 室内の環境を守りたい

対立はしていません。外側で減らす役と、内側で止める役です。順番に並んでいる関係なので、両方施工することもできます。

比較検討で確認していただきたい3つの数字

見積もりを並べる段階で、金額以外に確認しておくと判断が変わる項目があります。

1. 日射反射率だけでなく、放射率も確認する

日射反射率は、屋根を温める前の日射に対する値です。温まった屋根が放つ遠赤外線への振る舞いは、放射率でわかります。両方の数値を聞いてください。

2. サーモグラフィの表面温度ではなく、室内側の実測データを見る

遮熱工法の提案資料には、施工前後のサーモグラフィ画像がよく使われます。当社の資料にも掲載することがあります。ただしサーモカメラが捉えているのは表面温度です。屋根の外側が下がったことと、屋根の内側から放たれる熱線が減ったことは、同じではありません。

当社は自社建物(プレハブ・折板屋根・断熱材なし)で温度記録計による連続測定を行っており、そのデータをご提供できます。他社の提案についても、同じように室内側のデータをお求めになることをおすすめします。

3. 初期費用ではなく、期間で比べる

屋根面は埃・煤煙・排気で汚れます。汚れの付着により日射反射率は低下し、洗浄や再塗装をしなければ回復しません。再塗装周期はメーカーの公表値をご確認のうえ、10年から15年といった期間の総額で比較してください。初期金額の差が、期間で見ると逆転することがあります。

判断の目安:どちらが向いているか

状況 向いている工法
屋外の路面・デッキの表面温度を下げたい 遮熱塗料
屋根材の劣化を抑えたい(室内環境は問わない) 遮熱塗料
建物内部の温度・作業環境を改善したい リフレクティックス
日没後も室温が下がらないのを何とかしたい リフレクティックス
空調の電力使用量を下げたい リフレクティックス
夏だけでなく冬の暖房負荷も下げたい リフレクティックス
再施工の手間をかけたくない リフレクティックス

FAQ:遮熱塗料と遮熱材について

Q1. 屋根を熱くしている太陽光は、遠赤外線ではないのですか。

いいえ、屋根を熱くしているのは主に可視光と近赤外線です。太陽光にも遠赤外線は含まれますが、量はごくわずかで、地表に届くまでに大部分が大気に吸収されます。遠赤外線は、可視光・近赤外線を吸収して温まった屋根が、その後に放つものです。「遠赤外線で温まる」というストーブやサウナのイメージから誤解されやすい点ですが、数百℃のストーブと違い、約6,000℃の太陽はずっと波長の短い光が中心です。

Q2. 遮熱塗料を施工済みです。それでも遮熱材を入れる意味はありますか。

あります。塗料は日射を屋根の外側で減らしますが、反射しきれずに屋根が温まった分は、遠赤外線として室内へ放たれます。塗料の施工から年数が経ち、汚れによる性能低下が進んでいる場合はなおさらです。夕方になっても室温が下がらない、天井付近だけ極端に暑いといった症状があれば、遠赤外線が残っている可能性があります。

Q3. 断熱材との違いは何ですか。

断熱材は伝導熱・対流熱に対して、熱の伝わる速度を遅らせるものです。遮熱材は輻射熱(遠赤外線)を反射して入れないものです。対象が違うので、併用したほうが効きます。とくに冷凍冷蔵倉庫では、断熱材で保った低温を、遮熱材が屋根からの熱線から守るという組み合わせが期待できます。

Q4. どんな建物が遮熱材の対象になりますか。

折板屋根などの金属屋根や、スレート屋根の倉庫・工場が主な対象です。屋根が太陽光を受けて高温になり、その熱を屋内へ放射している構造の建物ほど効果が期待できます。陸屋根(コンクリート平屋根)は対象外となりますので、まずは屋根の形状をお知らせください。

まとめ:安いか高いかの前に、止めている熱が違う

遮熱塗料が反射しているのは、屋根を温める前の太陽光(可視光・近赤外線)。リフレクティックスが反射しているのは、温まった屋根が放つ遠赤外線。波長のピークが10倍以上違う、別の熱です。

だから金額だけを並べても、比較になりません。屋根の表面温度を下げたいのか、室内の環境を守りたいのか。そこが決まれば、選ぶべきものも決まります。

夕方になっても工場の中が涼しくならない。スポットクーラーを増やしても頭打ちになっている。夏場の電気代が読めない。ひとつでも当てはまるようでしたら、相手にしている熱は遠赤外線のほうです。

クライマテックでは、遮熱の効果を体感いただけるモデルルームをご用意しています。建物の構造・屋根形状・現状の断熱状況によって期待できる効果は変わりますので、効果が見込みにくい条件の場合はその旨を正直にお伝えします。現地調査・お見積もりは無料です。

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【出典・注記】

  • 太陽光のエネルギー内訳(紫外線約5%・可視光約45%・近赤外線約50%)、波長区分、塗膜の放射率0.85〜0.95、遮熱塗料の日射反射率(白系70〜80%・濃色40%前後)は、いずれも業界一般の目安値です。割合は概数で、2.5µmより長い波長の成分はごくわずかなため表では省略しています。個別製品の性能値については各塗料メーカーの公表資料をご確認ください。
  • 熱線のピーク波長(太陽光約0.5µm、60℃の屋根約9µm)は、黒体放射の理論値にもとづく目安です。
  • 「屋根表面50〜70℃」は一般的な目安であり、屋根材・立地・天候により変動します。
  • 本記事の遮熱塗料に関する記述は、一般的な日射反射型の遮熱塗料を前提としています。特殊な仕様の製品については個別にご確認ください。
  • リフレクティックスの反射率99%、アルミ純度99.99%、放射率0.03はいずれもカタログ値です。
  • 再塗装周期は製品により異なります。総額比較を行う場合は、検討中の塗料についてメーカーの公表値をご確認ください。
  • 遮熱による温度低減・省エネ効果は建物の構造・既存断熱・空調条件により異なり、効果を保証するものではありません。
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